彼女はその時、切り立った絶壁に張り巡らされた、金属製の段差の上に立っていた。
荒く張られた金網の隙間から足元を見やると、ひやりとした汗が両の手に滲む。
もとより、高いところは苦手だ。
でも、登るしかない。あの金色のサボテンダーを掴むために。
Lechatはポケットの中の電子カードを取り出すと、そこに記載された「MGP 196400」の刻印を見つめた。
目標の20万MGPは、もうすぐそこに見えているのだ。
そう思うと、不思議と、震える足がピタリと止まった。
大きく深呼吸をした後、中空に張り出した無骨なスロープをめがけて、飛び出す。
しかし、僅かに距離を見誤ったか、片方の足の着地点には地面がなかった。
声にならない悲鳴をあげながら、半身が宙に滑り落ちそうになるものの、とっさに足掻いた右手が張り出した金属の棒を握りしめる。
全身に冷たい汗が溢れ出る中、Lechatは何とかスロープによじ登ると、宙を見上げた。
「あと少し、あと少しなの…あの車まで…!」
新車納入
「やったーーーーレガリアゲット!」
「ついにやりよったか」
ということで、クエスト期限ぎりぎりにて、Lechatさんが20万MGP貯めることに成功しレガリアという車を手に入れることができたようです。
(引用:https://www.famitsu.com/news/201904/17174908.html)
この車は4人乗りの車で、そりゃあもうカッコいいわけです。
私といえば、手に入れたMGPは全てカードに注ぎ込むというスタイルで過ごしていたので、レガリアを手に入れるのは早々に諦めていましたが、Lechatさんは隙あらば所在地が「ゴールドソーサー」となってしまうくらいの根性を見せておったわけです。
そして努力の末に手に入れた新車レガリア・・・・これは初ドライブに参加させてもらうしかありませんね!
そこでフレンドの、
ヤスン
かおりしゃん
の3人でるしゃの登場を待つことになりました。
登場を待つ、というのは、るしゃが「遠くから車にのって颯爽と格好良く現れたい」との希望があり、街の外で待っていることになったからです。そのウキウキする気持ち、わかりますよ・・・!
あっあれじゃない!?あの車じゃないー!?
「ギュルルルル」
「ピタッ」
(自分で効果音までつけて・・・なんて嬉しそうなんだ・・・よかったな、るしゃ・・・!)
ということでドリフトストップで颯爽と現れた車に、早速乗り込みます。
私はまっすぐに助手席へ乗ります。
なぜなら助手席が一番カッコイイからです。
初ドライブへ
それでは早速、新車でドライブと決め込みましょう!!
うおおー!!!
すごい!勝手に動いてる!乗ってる感じめっちゃある!
これは思った以上に面白い!!
夜道をアクセル全開、駆け抜けるレガリア号。
草原を越え、橋を渡り、はるかエオルゼアの彼方めがけて走り抜ける。
その時、俺たちは完全に風になってたー。
でも。
そんな幸せな時間は長くは続かなかった。
誰も想像すらしていなかった、非常事態が訪れたんだ。
それはエオルゼアの深き山の奥を走っていた時のこと。
車上から流れる景色を、ゆっくりと楽しんでいた私はある違和感に気づいた。
あれっ!
俺なんかHP減ってない!?
もしかして・・・このあたりのモンスターって、俺よりレベル高いんじゃないの!?
その場合、車に乗ってても、俺は攻撃をされる・・・!?
その事実に気づいた私は、ハンドルを握りしめるるしゃに緊急自体を伝えようと口を開きかけた、まさにそのときー。
とんでもない事態を目の当たりにしたのでした。
おぉおー!!!
一斉に俺にターゲットが来てる!!!
ピコンピコンピコンピコンってめっちゃ来てる!
おあああああ
「る、るしゃ!!逃げ」
「えっ」
ドウドゥドウッ!!
作戦会議
なんか魔物の巣みたいなところで絶命した私。
かおりしゃんや、るしゃはレベルが高いので絡まれる様子はありませんが、助手席の私はモンスターの格好の的だったようです。
速やかな蘇生を求めます。
しかし蘇生をもらっても・・・
モンスターの巣のど真ん中なので、一瞬でまた絡まれて死んでしまいます。
そもそもなんでるしゃ君はこんな巣の中に突っ込んだのかな・・・。
でもまあ、来てしまったものは仕方がありません。
私は何とかここから生きて脱出したい。
そこで、我々は作戦を練ることにしました。
「まず、Lechatが俺を蘇生する」
「うん」
「でも、それから車に乗り込もうとすると、Lechatが車を準備してる間に死ぬから、もう一人の免許保持者、シャン・カオリが最初から車で待機しておく」
「なるほどね、わかった」
「蘇生と同時にすぐさま車に乗り込み、アクセル全開でこの地獄を抜け出すんだ」
「俺もそれしかないと思ってた」
「この作戦は全員のタイミングを合わせる必要がある・・・一人が遅れれば、それだけで俺の命は無い。頼むぞ、みんな」
「ふふっこれまで私が失敗したこと、ある?」
「久々に腕がなるわね・・・みんな、しっかり捕まっててよ」
「成功したらその作戦俺が考えたことにしていい?」
「よし、、、じゃあみんな」
奇跡の脱出劇
作戦が始まった。
「レイズ!」
シュバババッ!!
「まかせて!!しっかりつかまってなよ!!」
「GO!!」
うおおおおおおおおお!!
いけえええええ!!
走り抜けろおおおおおお!!
振り返るなああああああ
・・・
夜空に浮かぶあいつ
ブゥーーーン・・・。
モンスターの気配も消えた、小さな集落に車が止まった。
ここまで来れば、もう大丈夫だろう。
3人は静かに車を降りると、夜空を見上げた。
そのとき、それはきっと、気のせいだったのかもしれないけれどー。
星の彼方に、あいつの笑顔が見えた気がしたんだ。
-Fin-